HONJO Naoki

本城直季

HONJO Naoki

1978年、東京生まれ。東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。
4×5判カメラを使用して人物や風景などをミニチュアのように撮影する独特のスタイルを確立する。
写真集『small planet』で第32回木村伊兵衛賞を受賞。作品はメトロポリタン美術館やヒューストン美術館にコレクションされている。作品集に『ここからはじまるまち Scripted Las Vegas』(superstore Inc.)、『TREASURE BOX』(講談社)がある。


Born in 1978 in Tokyo. Diplomat of?media art, college of arts at Tokyo Polytechnic University.
Established his own style of photography by taking landscapes and personality in miniature figure by 4 x 5 camera.?
Received 32nd Ihei Kimura prize with "small planet". Works in collection at Metropolitan Museum, Houston Art Museum etc. Published "Scripted Las Vegas" and "Treasure box".

honjonaoki.com

本城直季 Small Planetに寄せて



それはすでに一握りの光でしかなかった、
やがて星、やがてこの世の最後に、
彼の心を誘った浮世のほこりも消え失せた


アントーワヌ・ド・サン=デグジュペリ
「夜間飛行」(堀口大學 訳)より


"鳥の目"で世界を俯瞰する空からの視界は地上からは見えない"もうひとつの何か"が現れてくる画角です。この画角の魅力はなんといっても、日常の人間の行動範囲では決して感じることのできない圧倒的な広がり感や重層感、まさに"見えなかった風景"が突然立ち現れた時の感動がベースにあります。しかし、この視覚体験を写真化すると、意外にも平凡で陳腐なものになってしまうことも事実です。三次元で存在する現実の世界を二次元の世界に置き換える写真表現の限界を物理的に痛感するのは、まさにこんな瞬間です。さらに見渡す世界の大きさを表現しようなどと考えたりすると、ファインダーを覗きながらどこでシャッターを切ったら良いのか分からなくなった経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

写真表現も全てのアートがそうであるように、"今、自分が目にしている全てを描き出すことを諦める"ことから、そのユニークな表現スタイルが編み出されます。今回ご紹介する『Small Planet』、ここに表現された世界たちが語りかけてくるストーリー、そしてその眼差しの美しさは本城直季の世界との向き合い方そのものです。彼だからこそ信じることが出来た、削ぎ落とした"写真の力"が"小惑星"の景色として見事に結晶しています。

或る意味では"鳥の目"ほど、扱いの難しい画角はありません。撮影技術はさておき、自らが高い場所に立つことで受ける撮影者の心理状態、人間としての意識の有り様は、彼の目の前に広がる風景の意味合いを大きく変えてしまう魔力をもっているからです。

高い場所から下界を視る、自分の眼下にその世界の全貌が捉えられる位置に立つことは、人間の潜在意識を大きく作用し、人間を対極ともいえるふたつのカテゴリーに分類することを可能にします。まずひとつ目のカテゴリーに属する人は、自身のメッセージ発信力がぐっと強まったように感じるタイプ、そしてもうひとつは風景全体から聞こえてくる様々なメッセージを受信している自分自身の心に気づく人たち。"鳥の目"という画角は人間を尊大にも、謙虚にもする不思議なスイッチです。

本城直季の広い景色を俯瞰する視界は、さらに大きな世界に繋がってゆけるドキドキするような希望に満ちた開放感と共に、豆粒のように見える家々や人々のそれぞれの暮らしの中に丁寧に織り込まれた肌触りが伝わってきます。写真行為そのものが、写真を撮る理由にもなるとしたら、『Small Planet』は写真家と世界の関わり方を追うことが出来る地図のような作品と言えるのではないでしょうか。ここに登場する建物、人間、動物、植物、そして乗り物もなんとも愛おしく、そこに慎ましく存在していることでしょう。"そこに居てくれるだけ"でほっとするような、そして私たちの想いを黙って受けとめてくれる存在として在り続ける穏やかな景色...。そんな『小惑星』に住んでいることのありがたさを本城直季の写真たちは語りかけてくれています。

東京画チーフキュレーター
太田菜穂子

100 PHOTOGRAPHERS100 PHOTOGRAPHERS Describing Tokyo Scapes

私たちの居場所、
東京の価値や存在を
写真を通して、
いま考える。